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DevOpsはなぜ必要?基礎から導入のポイント・実践事例まで徹底解説!

近年、ソフトウェア開発と運用の連携強化が重要視されており、その代表的な手法として「DevOps」が多くの企業やプロジェクトで注目を集めています。
特にアジャイル開発やクラウド技術の普及に伴い、より効率的で安定した開発・運用体制を実現するため、DevOpsの導入が加速しています。
この記事では、DevOpsの基本的な概念から、その導入によるメリット、実際の導入事例、よく直面する課題まで、わかりやすく解説します。
DevOps導入の全体像や重要なポイントをしっかりと理解できる内容なので、ぜひ最後までご覧ください!
目次
DevOpsとは?
DevOps(デブオプス)とは、ソフトウェア開発(Development)と運用(Operations)を一体化し、両チームが協力しながら継続的にサービスを改善していくための考え方や仕組み全般を指します。
従来のソフトウェア開発では、開発チームと運用チームが分かれていて、こんな問題がありました:
- 開発チーム:「アプリを新しくリリースしたよ!」
- 運用チーム:「えっ、サーバーの負荷が高くて動かないんだけど…」
- ユーザー:「バグがあるんだけど、いつ直るの?」
DevOpsを導入すると、このギャップを埋めることができます!
DevOpsで何が変わるの?
1. 開発と運用の連携がスムーズになる
開発チームと運用チームが協力して作業することで、問題が早く解決される。
2. 変更を素早く安全に反映できる
CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)という仕組みで、コードの変更をすぐにテストして、本番環境に反映できる。
3. 人の作業を自動化できる
サーバーの設定やテスト、デプロイ(リリース作業)を自動化することで、手作業によるミスを減らせる。
そこで、チーム間の対立を避けスムーズな開発、リリースを行うために導入されるのがDevOpsです。DevOpsを導入することによって、以下のようなメリットが期待できます。
このような利点から、DevOpsは現代のソフトウェア開発において不可欠なアプローチとなっており、アジャイル開発やクラウドコンピューティングと並び、企業の競争力を高める重要な要素として注目されています。
特に、変化の激しい市場に適応するためには、開発と運用の壁をなくし、協力し合う体制を整えることが求められています。
DevOpsを実践することで、組織の在り方を見直し、より迅速で柔軟なソフトウェア開発プロセスを実現することが可能になります。
DevOpsの背景と進化
DevOpsが生まれた背景
DevOpsが注目されるようになった背景には、アジャイル開発の普及、クラウドコンピューティングの浸透、技術の進化、サービスの複雑化といった要因があります。
従来のソフトウェア開発では、ウォーターフォール型開発が主流でした。
この手法では、要件定義、設計、開発、テスト、運用といった工程を順番に進めるため、品質の確保には適している一方で、市場の変化や新たな要望に迅速に対応しにくいという課題がありました。
そこで登場したのがアジャイル開発です。
アジャイル開発では、短い開発サイクル(スプリント)を繰り返しながら機能を追加していく手法を採用し、柔軟な対応を可能にしました。
しかし、頻繁なリリースを実現するためには、開発チームと運用チームの緊密な連携が不可欠となり、DevOpsの概念が生まれました。
さらに、クラウドコンピューティングの普及もDevOpsの推進を後押ししました。
AWSやAzure、GCPなどのクラウドプラットフォームが登場したことで、サーバーの調達や設定が容易になり、開発から運用までを一括で管理する必要性が高まりました。
加えて、DockerやKubernetesなどのコンテナ技術、AnsibleやChefなどの構成管理ツールの進化により、インフラをコードで管理し、自動的にデプロイすることが可能になりました。
また、アプリケーションのマイクロサービス化により、複数の小規模なサービスが連携して動作する構造が一般的になりました。
これに伴い、システム全体の監視や継続的なデリバリーが求められるようになり、開発と運用の一体化が不可欠になっています。
DevOpsの進化と現在のトレンド
DevOpsは、単なる開発手法ではなく、開発と運用が協力し合いながら継続的に価値を提供する文化へと進化しました。
現在では、以下のようなトレンドが見られます。
・CI/CDの自動化
継続的インテグレーション(CI)と継続的デリバリー(CD)の導入により、コードの変更を迅速に本番環境へ反映し、リリースサイクルを短縮する
・Infrastructure as Code(IaC)の活用
TerraformやCloudFormationなどのツールを用いて、インフラの構成をコード化し、一貫性のある環境管理を実現する
・セキュリティの統合(DevSecOps)
セキュリティを開発プロセスに組み込み、リスクを最小限に抑えながら高速なリリースを可能にする
・オブザーバビリティの向上
PrometheusやGrafanaなどのツールを活用し、システムの挙動を可視化することで、障害発生時の迅速な対応を支援する
市場の変化が激しい現代において、企業は迅速かつ柔軟にITシステムを更新し続ける必要があります。
DevOpsはその実現を支える重要なアプローチとして、多くの組織で導入が進められています。
DevOpsの開発プロセス
DevOpsの開発プロセスは、いくつかの重要なステップから成り立っています。
ここでは、DevOpsの各プロセスについて詳しく解説します。
1.計画(Planning)
まず、開発するサービスに求められる機能を整理し、タスクの進行方法や管理手法を決定します。適切な計画を立てることで、開発の効率化やスムーズな連携が可能になります。
2.開発(Development)
計画に基づいて、プログラムの実装を進めます。
開発チームは、コードの記述やテストを繰り返しながら、機能の追加や修正を行います。
3.継続的インテグレーション(Continuous Integration: CI)
継続的インテグレーション(CI)は、開発したコードを頻繁に統合し、そのたびに自動的にビルドやテストを行うプロセスです。
開発者がGitなどのバージョン管理システムにコードをプッシュすると、自動でテストが実行され、不具合を早期に検出できます。
これにより、品質を保ちながら、素早い開発サイクルを維持することが可能になります。
代表的なCIツール:Jenkins、GitLab CI/CD、CircleCIなど
4.デプロイ(Deployment)
開発が完了したコードを本番環境へリリースするプロセスです。
継続的デリバリー(Continuous Delivery)や継続的デプロイ(Continuous Deployment)を活用することで、ステージング環境でのテストを通過したコードを自動的に本番環境へ展開できます。
このプロセスにより、新機能の提供を迅速化し、ユーザーのフィードバックを素早く反映できるようになります。
デプロイの自動化には、AWS CodePipelineやAzure DevOps、GitLab CI/CDなどのツールが利用されます。
5.運用(Operations)
リリース後のシステム運用では、サーバーやアプリケーションの安定稼働を確保するために、継続的な監視が求められます。
障害が発生した場合は、迅速に対応し、サービスの継続性を維持することが重要です。Infrastructure as Code(IaC)を活用することで、インフラ管理の自動化や環境の一貫性を保つことが可能になります。
6.継続的フィードバック(Continuous Feedback)
継続的フィードバックは、ユーザーからの意見や要望を開発プロセスに反映するための重要なプロセスです。
チャットやメールでの問い合わせ、SNSのコメント、アプリの利用データなどを収集し、サービスの改善につなげます。
このフィードバックループを確立することで、よりユーザーに寄り添ったサービスを提供できます。
DevOpsの各プロセスを適切に運用することで、開発と運用の連携を強化し、迅速で高品質なサービス提供が可能になります。
DevOpsを導入するメリット
DevOpsを導入することで、組織は以下のような多くの利点を得ることができます。
開発スピードと品質の向上
DevOpsの最大の利点は、開発と運用の連携を強化することで、ビジネス価値を迅速にユーザーへ届けられる点です。
継続的インテグレーション(CI)や継続的デリバリー(CD)の導入により、リリースプロセスが自動化され、リリースサイクルが大幅に短縮されます。
これにより、新機能を迅速にユーザーへ提供できるだけでなく、頻繁な小規模リリースにより、大きな障害の発生を防ぎ、万が一問題が発生しても、原因の特定と早期復旧が容易になります。
また、アジャイル開発手法の活用により、機能ごとの迅速なリリースやテスト期間の短縮が可能となり、生産性の向上にも寄与します。
コスト削減と効率化
自動化の推進により、手動での設定ミスやリリース失敗のリスクが低減され、エラー対応に費やす時間やコストを削減できます。
さらに、開発チームと運用チームが共通の目標を持ち、継続的に情報を共有する文化が醸成されることで、コミュニケーションロスが減少し、各チームの専門知識を活かした連携が可能となります。
これにより、全体的な効率性が向上し、リソースの最適化が実現します。
ビジネスへのインパクト
ユーザーからのフィードバックを迅速に開発プロセスに取り入れる体制を構築できるため、市場の変化に柔軟に対応できます。
これにより、競合他社との差別化が容易になり、ビジネスの成長と競争力の強化につながります。
信頼性の向上
DevOpsは小規模な開発サイクルを特徴とし、バグや不具合を早期に発見しやすくします。
問題が発生した場合でも迅速に対応できるため、信頼性の高いサービス提供が可能となります。
これらのメリットを通じて、DevOpsの導入は組織全体のパフォーマンス向上と、ユーザー満足度の向上に寄与します。
DevOpsを支える「ツール」
DevOpsを成功させるためには、適切なツール選びが重要です。
主なDevOpsツール
DevOpsツールにはさまざまなカテゴリーが存在し、ツールによってカバーできる範囲も異なっています。以下の選定基準を参考に自社にあった適切なツールを選択することが重要です。
カテゴリ | 選定基準 | 主要ツール |
---|---|---|
CI/CD | コスト、統合性、スケーラビリティ | Jenkins, GitLab CI, CircleCI, GitHub Actions |
構成管理 | コスト、学習曲線、拡張性 | Ansible, Chef, Puppet |
コンテナ管理 | コスト、拡張性、統合性 | Docker, Kubernetes, Rancher Desktop |
監視 | コスト、スケーラビリティ、統合機能 | Prometheus, Grafana, New Relic |
クラウド | コスト、統合機能、サポート体制 | AWS, Azure, GCP |
DevOps導入を成功させるポイント
DevOpsの導入は単なる開発手段の変化に留まらず、組織全体の文化にも大きな影響を与えます。ここではプロジェクトに関わる一人ひとりがDevOpsの文化を意識し、高いパフォーマンスを発揮するために必要なポイントをご紹介します。
DevOpsを効果的に導入するには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
- チームの意識改革:頻繁なコミュニケーションや報告を意識し、開発チームと運用チームの壁をなくすことで、協力体制や信頼関係を築く
- KPI・KGIの設定:KPI・KGIを設定し、達成状況を定期的に確認しDevOpsの効果が表れているかや、より高いパフォーマンスを発揮するための改善を行う
- 継続的な改善:DevOpsの意識や文化が根付くまでには長い期間がかかることが想定されるため、導入後も定期的に評価し、プロセスを最適化する
ツールとマインドセットを適切に組み合わせることで、DevOpsの導入と定着がスムーズに進みます。
DevOps導入の成功事例
ここまではDevOpsの基礎情報や導入のポイントについて解説しました。すでにDevOpsは世界のトップ企業でも導入されており、そのトップクラスのパフォーマンスにも貢献しています。ここでは、その実例を実際にご紹介します。
事例① Netflix
動画配信サービスを提供するNetflixは、早い段階から大規模にDevOpsを導入し、成功している企業の一つです。マイクロサービスアーキテクチャやクラウドコンピューティングを活用し、高速なリリースサイクルを実現。障害時の迅速な対応も可能になり、ユーザー体験を向上させています。
事例② DocuSign
電子署名や捺印を管理し、契約プロセスの最適化ソリューションを提供するDocusign Inc.では、従来アジャイル開発が採用されていましたが、Docusign Inc.開発スピードの維持のため、DevOpsが導入されました。当初はサービスの特性上、導入が難航したようですが、自社のサービスにあった適切なツールを用いることで、導入に成功し、競争力の強化に繋げています。
DevOpsの未来と進化の方向性
後のDevOpsは、さらなる自動化とAI活用の進展が予測されます。
- AIOpsの活用:AIを活用した異常検知や自動トラブル対応
- NoOpsの実現:完全自動化により運用業務を最小限に
- セキュリティの統合(DevSecOps):開発プロセスにセキュリティを組み込む
これにより、より高速かつ安全な開発・運用が可能になるでしょう。
まとめ
DevOpsは、開発と運用の連携を強化し、ソフトウェアの品質向上と迅速なリリースを実現する重要な手法です。適切なツールとマインドセットを取り入れ、継続的な改善を行うことで、競争力のある開発体制を構築することができます。
今後も技術の進化とともに、DevOpsの可能性はさらに広がることが予想され目が離せない注目の手法です。

ドコドア 編集部
EditTeam