- ブランディング
飲食店ブランディングの進め方|コンセプト設計からロゴ・店舗・SNSまで解説

飲食店を新しく立ち上げるときや、2店舗目・3店舗目への展開を考えるとき、「料理やサービスにはこだわっているものの、それを店舗の魅力としてうまく伝えられていない」と感じることがあります。
そこで重要になるのが、飲食店ブランディングです。
飲食店ブランディングは、単にロゴや店舗デザインを整えることではありません。店名、ロゴ、内装、メニュー、接客、Webサイト、SNSなど、顧客が店と接するさまざまな場面を一つの考え方で整理し、「この店は何を大切にしているのか」「顧客にどのような価値を提供するのか」を一貫して伝えるための取り組みです。
特に新規出店や多店舗展開では、個別のデザインをその都度決めるのではなく、店舗として大切にする価値やブランドの軸を先に定めておくことが重要になります。
この記事では、飲食店ブランディングの基本的な考え方から具体的な進め方、店名・ロゴ・店舗・メニュー・接客・SNSへの展開、多店舗展開時の統一設計、低予算で始める方法までを整理します。
飲食店ブランディングでは何を設計する?
飲食店ブランディングでは、最初に店舗が提供する価値や目指すイメージを整理し、それを顧客とのさまざまな接点に落とし込んでいきます。
具体的には、店舗コンセプトを整理したうえで、店名やロゴ、カラー、内装、メニュー、接客、Webサイト、SNSなどへ展開していきます。先に店舗として大切にする軸を決めておくことで、それぞれの制作物を個別に考えるのではなく、一貫した方向性で設計しやすくなります。
例えば、同じ料理を提供していても、店舗の雰囲気、スタッフの接客、メニューの見せ方、料理の盛り付け、写真の雰囲気、SNSで使う言葉、店舗名やロゴなどが変われば、顧客が受け取る店舗の印象も変わります。
そのため、個別の制作物を先に決めるのではなく、まず「どのような店として認識されたいのか」を整理することが基本になります。
ブランディングとは何かという基本は、別の記事で解説しています。
店舗コンセプトを起点に考える
飲食店ブランディングを考える際は、店舗コンセプトを起点に、提供する商品やサービス、店舗の雰囲気などを整理します。
例えば、次のような項目を言語化しておくと、後のデザインや発信を検討するときの判断基準になります。
- 何を提供する店なのか
- どのような顧客を対象とするのか
- どのような利用シーンを想定するのか
- 店舗として何を大切にするのか
- 他店と比べた特徴は何か
- どのような印象を伝えたいのか
J-Net21でも、飲食店の開業において店舗コンセプトを明確にし、ターゲットや商品・サービス、店舗の雰囲気などを踏まえて検討することが示されています。
こうして整理したコンセプトが、その後の店名やロゴ、内装、メニューなどを決める際の判断基準になります。
参考:中小企業基盤整備機構 J-Net21「店舗物件の選び方」
店名・ロゴ・カラー・書体を設計する
コンセプトが整理できたら、それを店舗の見た目と言葉に落とし込みます。
店名・ネーミング
店名を決めるときは、覚えやすさや読みやすさだけでなく、口頭で伝えやすいか、検索しやすいかなども確認します。
また、多店舗展開を考える場合は、1店舗だけで成立する名称なのか、今後ブランド全体の名称として展開できるのかを分けて考える必要があります。
採用する前には、商標やドメイン、SNSアカウントなどの使用状況も確認しておくと安心です。
ロゴデザイン
飲食店のロゴデザインでは、ロゴ単体の見た目だけでなく、どこで使うのかを考えることが重要です。
ロゴは看板だけでなく、メニュー、ショップカード、テイクアウト容器、包装資材、Webサイト、SNS、スタッフウェアなど、さまざまな媒体で使用されます。
そのため、看板では見やすくても、小さなSNSアイコンでは判別しにくいといった問題が起こる場合があります。
制作時には、サイズや背景色が変わった場合にも使用できるかを確認しておくと、後の展開がしやすくなります。
カラー・書体
カラーや書体も、店舗の印象をつくる要素です。
例えば、明るく鮮やかなカラー、落ち着いた色合い、自然を感じるアースカラー、モノトーンなど、色の組み合わせによって受ける印象は変わります。
書体についても、柔らかな印象のものや力強い印象のものなど、それぞれ特徴があります。
ただし、「飲食店だからこの色」といった決め方ではなく、店舗コンセプトや内装、料理との相性まで考えることが大切です。
店舗・メニュー・接客にブランドを展開する
ブランドの方向性が決まったら、実際の店舗体験にも展開します。
外観・内装
外観や内装は、店舗に入る前から顧客が受け取る印象をつくる接点です。
看板、サイン、家具、照明、素材、色などを、店舗コンセプトに合わせて検討します。
メニュー
メニューは料理の情報を伝えるだけでなく、店舗の印象にも関係する接点です。
料理写真、文字、色、レイアウトなどを整理し、店舗全体の方向性と合わせていきます。
接客・サービス
接客もブランド体験の一つです。
言葉遣い、挨拶、料理の提供方法、スタッフの身だしなみ、声かけ、店内での案内など、顧客が直接触れる部分を店舗の方向性に合わせて考えます。
多店舗展開する場合は、「どのような接客を大切にするのか」という基本方針を共有しておくことで、店舗が増えた際にもブランドの考え方を伝えやすくなります。
多店舗展開時の統一設計
1店舗では、経営者やスタッフが直接すべてを管理できます。しかし、2店舗、3店舗と増えていくと、店舗ごとに判断が変わる場面も増えていきます。
そこで重要になるのが、ブランドとして統一する部分と、店舗ごとに変える部分を分けることです。
すべてを同じにする必要はない
多店舗展開というと、すべての店舗を同じデザインにすることをイメージするかもしれません。
しかし、店舗の立地や規模、利用シーンなどによって、調整が必要になる場合があります。
例えば、ロゴやブランドカラーなど、ブランドとして共通させる要素を決める一方で、店舗ごとの空間やメニュー構成などは、それぞれの条件に合わせて変更できるようにします。
重要なのは、何を統一し、何を店舗ごとに調整できるのかをあらかじめ整理しておくことです。
ブランドガイドラインを作る
店舗数が増えるほど、ブランドの判断基準を共有できる状態にしておくことが重要になります。
そのための方法の一つが、ブランドガイドラインの作成です。
ガイドラインには、例えば次のような内容をまとめます。
- ブランドコンセプト
- ロゴの使用ルール
- ブランドカラー
- 使用する書体
- 写真の方向性
- コピーや文章のトーン
- 店舗ごとに変更できる範囲
こうしたルールをまとめておくことで、新しいスタッフや制作会社が関わる場合にも、ブランドの考え方を共有しやすくなります。
SNS発信との連動
WebサイトやSNSも、ブランドの価値を伝える顧客接点の一つです。
店舗で感じる印象とSNSで発信する内容が大きく異なると、ブランドとして一貫した印象をつくりにくくなります。
そのため、SNSを店舗とは別の施策として考えるのではなく、店舗で整理したブランドの方向性をオンラインにも反映させます。
SNSで発信する内容を整理する
SNSでは、店舗のコンセプトや看板商品だけでなく、食材へのこだわり、店内の雰囲気、スタッフ、利用シーンなども発信できます。
ただし、何でも投稿すればよいわけではありません。
「この店舗は何を大切にしているのか」というブランドコンセプトに合わせて、発信内容を整理することが重要です。
写真や文章のトーンを揃える
SNSでは、写真や文章から店舗の雰囲気を伝えることができます。
例えば、写真については、
- 明るく自然な写真
- 暗めで落ち着いた写真
- 商品を大きく見せる写真
- 店内の空気感を伝える写真
- スタッフや人物を中心にした写真
など、撮影の方向性を決めておきます。
投稿画像に使用する文字や余白、ブランドカラーなどもルール化できます。
文章についても、店舗として使う言葉や伝え方の方向性を整理しておくと、投稿ごとの印象を揃えやすくなります。
店舗そのものを発信素材として考える
SNSとの連動では、「SNS用の画像をつくる」だけが方法ではありません。
店内のサイン、料理の盛り付け、パッケージ、ショップカードなど、顧客が撮影したりSNSで紹介したりする可能性のあるものもブランド接点になります。
重要なのは、SNSで紹介されることだけを目的にするのではなく、SNSで見た印象と実際の店舗体験が大きく離れないように考えることです。
低予算での始め方
飲食店ブランディングというと、ロゴ、店舗内装、Webサイト、撮影、SNS運用など、すべてを一度に整えるイメージを持つかもしれません。
しかし、最初からすべてを制作する必要はありません。
予算に限りがある場合は、ブランドの軸を整理し、顧客との接点が大きいものから優先して進める方法があります。
ロゴやWebサイトなどの制作にかかるブランディングの費用相場は、別の記事でまとめています。
まずはブランドの軸を整理する
最初に取り組みたいのが、店舗のコンセプト整理です。
例えば、次の項目を1枚にまとめます。
- 店舗名
- 提供する商品
- 対象とする顧客
- 店舗の特徴
- 大切にする価値
- 店舗の雰囲気
- 価格帯
- 利用シーン
- ブランドとして伝えたい印象
- 競合との違い
こうした情報を整理しておくと、後からロゴ、Webサイト、メニュー、SNSなどを制作するときの判断基準になります。
顧客との接点が大きいものから着手する
限られた予算で進める場合は、すべての制作物を同時に変更するのではなく、顧客との接点が大きいものから優先します。
例えば新規出店なら、店舗コンセプト、店名・ロゴ、外観・サイン、メニュー、Webサイト・SNSなどのように、必要なものを整理できます。
ただし、これはすべての店舗に当てはまる固定的な順番ではありません。
テイクアウトが中心ならパッケージを優先することもありますし、既存店のリニューアルなら、現在使っているロゴや店舗デザインの整理から始める場合もあります。
重要なのは、自店舗にとって顧客との接点が大きい場所から優先順位を決めることです。
既存の資産を活用する
新しくすべてを作り直すのではなく、現在あるものを整理することもブランディングの一つです。
例えば、
- 既存ロゴを整理する
- メニューの情報設計を見直す
- SNSの写真ルールを決める
- 店舗写真を撮り直す
- Webサイトの文章を整理する
- ブランドカラーを決める
などがあります。
現在あるものを活用しながら、ブランドとしての方向性が伝わりにくい部分から順番に整えていくことで、必要な制作物を整理しやすくなります。
飲食店ブランディングでよくある失敗と注意点
飲食店ブランディングを進める際は、個別のデザインだけに目を向けず、店舗全体で考えることが重要です。
ここでは、取り組む際に注意したいポイントを整理します。
ロゴから先に決めてしまう
ロゴはブランドを表す重要な要素ですが、ロゴだけを先に決めても、店舗として何を伝えたいのかが明確になるわけではありません。
まず店舗コンセプトや提供する価値を整理し、その内容を踏まえてロゴやカラーなどを検討することが大切です。
「おしゃれ」を目的にしてしまう
飲食店ブランディングでは、見た目を整えることだけを目的にしないことも重要です。
ロゴや内装がきれいにまとまっていても、店舗の価値や特徴が伝わらなければ、ブランドとしての判断基準にはつながりません。
「どのような店として認識されたいのか」を起点に、デザインや言葉を考える必要があります。
すべてを統一しすぎる
ブランドの一貫性を意識するあまり、すべての店舗や媒体を同じデザインにする必要はありません。
特に多店舗展開では、ブランドとして共通させる要素と、店舗ごとに調整できる要素を分けておくことが重要です。
SNSだけを別のデザインにする
店舗では落ち着いた雰囲気をつくっているのに、SNSではまったく異なる写真や文章を使っていると、媒体をまたいだ印象を揃えにくくなります。
SNSの写真や文章も、店舗で整理したブランドの方向性に合わせて設計します。
ブランドを作って終わりにする
ブランドはロゴやガイドラインを作った時点で完了するものではありません。
新しい店舗を出店したり、新しい媒体を追加したりすると、ブランドをどのように展開するかを改めて考える場面が出てきます。実際の運用を通して、現在のルールで対応できない部分があれば見直していくことも必要です。
まとめ
飲食店ブランディングは、ロゴや内装を整えるだけの取り組みではありません。
どのような店として認識されたいのかを整理し、その価値を店名、ロゴ、外観、内装、メニュー、接客、Webサイト、SNSなどの顧客接点へ反映していくことが重要です。
進める際は、
店舗コンセプトを整理する
↓
店名・ロゴ・カラー・書体などに落とし込む
↓
店舗・メニュー・接客などへ展開する
↓
多店舗では統一する部分と変える部分を整理する
↓
SNSにもブランドの方向性を反映する
↓
予算に応じて優先順位をつける
↓
運用しながら必要に応じて見直す
という流れで考えると整理しやすくなります。
最初からすべての接点を作り直すのではなく、まず店舗として大切にする価値を言語化し、そこから必要なデザインや発信を考えていくことが、飲食店ブランディングを進めるうえでの基本になります。
店舗のコンセプト整理からロゴ、Webサイト、SNSなどの具体的な制作まで、必要な範囲に合わせて検討することで、自店舗に合ったブランドづくりを進めやすくなります。
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ドコドア 編集部
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