- 運用
修正を依頼するたびにデザインが劣化していく悪循環を防ぐ
ホームページの制作において、なかなかデザインに納得がいかず修正を依頼し続けた結果、よりいっそう機能性に乏しく見苦しい不本意なデザインになってしまうことがよくあります。こうしたことを起こさないためには、どんなことに気をつければいいでしょうか?
経験の浅いウェブ制作会社に依頼した場合
食堂でカレーライスを注文したが、運ばれてきたカレーライスを見たら好みのものではなかった。そうしたとき「思ったのと違ってたので料金はカレーライスのままで海鮮丼に変えてください」などという客はいないでしょう。またそうした要望に応じる食堂もないでしょう。
しかしデザインの現場では、これとほぼ同じことが頻繁に起きています。こうしたことが起きる理由は、ごく率直に言えばウェブ制作会社の能力不足です。次のようなケースにあてはまる場合、ウェブ制作会社の能力不足を疑い、依頼者側はそのつもりで対応すればスムーズに運ぶでしょう。
- クライアントの要望を完遂義務と認識してしまう
- 未熟な制作会社では、経験や事実に基づくプロらしい提案がなく、依頼者の要望に沿うことを第一に考えがちです。この結果、依頼者がほんの思いつきで口にした要望について、特に精査することなくそのまま実装してしまい、プロらしさに欠ける成果物が上がってきます。
- 当初の見積もりを厳守しようとしてしまう
- あらかじめ決められた費用と工数を厳守することが依頼者のためだと考える制作会社では、修正を依頼するたびに品質が下がっていきます。修正や変更に応じながら当初の工数内で収めようとすれば、手を抜かざるを得ないためです。
- デザインの意図を十分に説明できない
- デザインすることそのものについて十分な能力を持ったデザイナーによる成果物でも、依頼者が初見で違和感を覚えることはあり得ます。しかしそうした場合でも、デザイナーの意図が十分に説明されれば、ほとんどの依頼者は納得するでしょう。この説明が不十分だった場合、依頼者は修正を依頼するか、または不満をため込む結果になります。
ほとんどの場合デザイナーは、よいものを作ること、クライアントを満足させること、エンドユーザーから適切な反応を引き出すことを指向しています。おかしなものを作り、クライアントに不満を抱かせたいデザイナーなど存在しないのです。
もし不幸にも、すでに依頼したウェブ制作会社が頼りなく見えてしまったような場合でも、依頼者側が次のようなことを心がけることで、コミュニケーションをスムーズなものにし、よりよいものを仕上げてもらえる可能性が高まります。
- 自らが出した要望について、その有効性についての率直な意見を求める
- 修正や変更を依頼する場合、追加の費用の有無や金額について尋ねる
- デザインの意図についてきちんと質問し、納得できるまで答えてもらう
もちろん、十分な能力を持ったホームページ制作会社に依頼できていれば、こうした問題は発生せず、配慮も不要でしょう。しかし予算や地域などの事情でそうもいかないという場合には、少しの配慮でスムーズに、よりよいものが仕上がる可能性が高まります。
依頼者側の理解が不足している場合
冒頭で示したカレーライスと海鮮丼の例では、カレーライスと海鮮丼が別のものであることは誰にでもわかるため、実際の食堂でこのような行き違いが発生することはないでしょう。しかしホームページ制作では、依頼者側からすればちょっとした要望でも、制作会社側から見ればとんでもない要求、という行き違いが起こります。
ほぼすべてのデザイナーがよいものを作りたがっているのと同様、ほとんどの依頼者もまた、制作会社の採算を度外視して不当に過重労働させたいとは考えていないことでしょう。条件の範囲内で最高の仕事をしてほしいと考えているはずです。であるなら、次のようなケースには注意が必要です。
- 社長など担当者以外が横やりを入れてしまう
- それまで依頼者側の担当者が制作会社と合意しながら慎重に進めてきたプロジェクトでも、社長などの偉い人の横やりで修正依頼につながるケースがあります。コンセプトは曖昧になり、担当者のモチベーションは低下し、よいことはありません。担当社員を信頼して任せましょう。
- ビジュアル面の個人的な好き嫌いで評価してしまう
- 技術的な細かい点についての理解が十分でなくても、誰でもビジュアルの好き嫌いは評価できます。このため、依頼者側の担当者や経営者の個人的な好みで修正を依頼されることは頻繁にあります。しかし誰かの好みに合わせるのであれば、それは買い手であるターゲットユーザーの好みであるべきで、売り手であるあなたの好みではありません。
- 修正依頼の理由を説明していない
- 依頼者側からの追加の要望や修正依頼は、その意図をよくよく聞いてみれば、とても的を射た素晴らしいものであることは珍しくありません。しかし残念ながら修正依頼のほとんどは「ここをこうしてくれ」というもので、意図の説明はありません。制作会社としては、意味がわからないまま言われたとおりに作業することになりがちです。
完成が近くなってある程度の形が見えてきた段階になって発生する修正依頼は、制作会社にとってとても困難なものです。すでに作ってしまったカレーライスを海鮮丼に作りかえるのはほぼ不可能なのです。しかし依頼者からすれば、カレーライスのビジュアルを見ないと具体的なイメージがつかないのでしょう。
ビジュアル面の好き嫌いは誰にでも判断できますが、それだけを見て単なる好みで判断するのは危険です。そうならないために、依頼者側の担当者はホームページ制作会社と緊密にコミュニケーションをとりながら、慎重にプロジェクトを進めています。それを尊重するのが経営者のつとめです。
また、単なる好みではない根拠や理由があって修正を依頼する場合には、その意図をきちんと説明するようにしましょう。そのアイデアが優れたものであったなら、御社の担当者も制作会社も、よいものを作るために、その修正に全力で取り組むことでしょう。
修正依頼などの交渉ごとをスムーズにするために
「ホームページ制作会社に依頼したはいいが納得できる成果物が上がってこない」という声は本当に頻繁に聞かれます。そうした中、ウェブマーケティングのコンサルタントという筆者の仕事柄、セカンドオピニオンを求められることも多々あります。
そうした視点でホームページ制作会社を評価しても、多くの場合、その企画提案力、デザイン能力、実装能力などは良くも悪くも値段なりで、不当に低いということはありません。というのも、デザインや制作技術、ウェブマーケティングについては、どの会社もある程度以上の勉強をしていて、経験もあるからです。
ただし格安の制作会社を中心に、コミュニケーション能力、とりわけ対人コミュニケーション能力が未熟で、意思疎通がスムーズにいかず不安を覚えるようなケースは非常に多く見かけます。そうした制作会社に依頼する場合、コミュニケーションには細心の注意を払うべきでしょう。
そうした手間をかけたくない場合は、ウェブ制作会社の窓口となる担当者のコミュニケーション能力をよく吟味したうえで依頼先を決めるのが正解です。ほとんどの場合、成果物に納得できないのはコミュニケーションの問題だからです。
ドコドア デザイン部
DesignTeam