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ホームページ制作の「顧客志向」と「ものづくり志向」
ホームページ制作は業種でいえば「クライアントの問題を解決する」という専門サービス業ですが、その一方で「形あるものを作り上げる」という製造業に近い側面もあります。専門サービスとしての顧客志向と、製造業のようなものづくり志向が融合したものがホームページ制作業です。それぞれの志向を理解することで、依頼先の選定がしやすくなるでしょう。
ものづくり志向とは
高度成長期からの長期間にわたり、日本の産業構造の主役は製造業でした。近代にはすでに、日本の職人による匠の技は世界的な水準にあったといいます。まさに日本は古くからの「ものづくり立国」であり、いわば「ものづくり志向」は私たち日本人の根幹です。
ものづくりとは普通は製造業やそこで使われる技術、人々のことを指す。単純作業での製造ではなく特に職人などの手による高度な製造の場合にこういった表現を用いられることが多い。
「ものづくり」という言葉は主に、高性能・高品質・低価格のような「よい製品をつくる」ことを指向する文脈で使われます。機能に優れ、小さく軽く、壊れにくく、そして値段の安い製品を生み出だそうとするものづくり志向は、私たち日本人の内面に深く根ざしています。
ものづくり志向はよいものですが、どんな仕事にも適用できるわけではありません。ものづくり志向がよく適合するのはあくまでも、優れた製品を世に送り出す役割をになう製造業においてです。ホームページ制作は製造業ではありませんから、ものづくり志向だけでは不足なのです。
ホームページ制作は製造業かサービス業か
結論から述べれば、ホームページ制作はサービス業に属します。総務省が定める日本標準産業分類(平成25年10月改定の現行分類)によれば、デザイン業は次のように分類されています。
- 大分類L 学術研究、専門・技術サービス業
- 中分類72 専門サービス業(他に分類されないもの)
- 726 デザイン業
- 中分類72 専門サービス業(他に分類されないもの)
上記のようにデザイン業は「専門サービス業」に属するものであり、産業分類上、製造業や建設業に属するものではないことは明確です。また、ホームページ制作はデザインだけで完結するものではなく、その周辺には様々な業務が必要となります。それらの周辺業務もまた、専門・技術サービス業に属したものです。
- 大分類L 学術研究、専門・技術サービス業
- 中分類72 専門サービス業(他に分類されないもの)
- 726 デザイン業
- 728 経営コンサルタント業,純粋持株会社
- 7281 経営コンサルタント業
- 中分類73 広告業
- 731 広告業
- 中分類74 技術サービス業(他に分類されないもの)
- 749 その他の技術サービス業
- 中分類72 専門サービス業(他に分類されないもの)
製造業におけるものづくり志向に学ぶ点は大いにあるものの、サービス業であるホームページ制作においては、依頼側と提供側の双方が、製品の購入や製造とは異なる視点を持っている必要があります。ホームページ制作はサービス業のなかでも、専門サービス業に属します。さてでは、その専門サービス業とは何でしょうか?
依頼者の問題を解決する「専門サービス業」
専門サービスとは、専門的な知識や技術を用いて依頼者の問題を解決する仕事をいいます。依頼者が専門知識や技術を必要とする問題に直面したとき、問題解決のための知識や技術を求めて専門家に依頼する、その依頼先が専門サービス業です。
日本の産業分類においては、弁護士、会計士、税理士、社労士、不動産鑑定士などの士業のほか、デザイン、コンサルタント、翻訳、通訳などがこれにあたります。また専門サービスを英語ではプロフェッショナル・サービスといい、上記の日本における例のほかに、医師や建築士なども含みます。
専門サービスの提供を受けることは、製品を購入する場合とは異なる特徴があります。書籍「コトラーのプロフェッショナル・サービス・マーケティング」に示されている特徴の一部)を以下に紹介します。
- 無形性
- 購入前には、見ることも、触ることも、味わうことも、聞くこともできない。
- 不可分性
- サービスの提供者とサービスそのものを切り離すことができない。
- 変動性
- サービスの品質が一定ではない。品質はサービス提供者の技能や状態に影響を受けるほか、サービスを受ける側の姿勢にも影響を受ける。
- 消滅性
- 事前に在庫しておいてあとから販売するということができない。
上に示したような製造業との相違点から、専門サービスにおいては、高品質で低価格というものづくり志向を簡単にはあてはめることはできません。では、サービスの品質はどう判断すればよいのでしょうか?
専門サービスの品質と顧客志向
前述の書籍「コトラーのプロフェッショナル・サービス・マーケティング」によれば、良質なサービスとは顧客の期待を上回るサービスのことだといいます。この観点からホームページ制作サービスを見てみましょう。
多くの場合、企業がホームページに期待するものは売上アップの達成です。つまり、売上に直結する数値目標をクリアすることが、期待に応えるホームページ制作サービスであるといえます。それを達成し、さらに上回るためには、結果品質はもちろん、プロセスの品質もまた重要です。
- サービスを受けた結果の品質
- 「ホームページ制作会社の提案によって業務や収益がどの程度改善したか」または「ホームページ制作会社は制作プロジェクトの各フェーズを期日通りに達成したか」のような、サービスの提供を受けた結果は適切か。
- サービス提供プロセスの品質
- 「ホームページ制作会社の主導でスムーズにプロジェクトを進めることができたか」または「ホームページ制作会社は親身な配慮と共感をもって誠実にプロジェクトを進めてくれたか」のような、サービスの提供を受けている過程は適切か。
依頼者がホームページ制作会社を乗り換える理由のほとんどは、以前の制作会社のサービスが上記のような点で適切でなかったというものです。つまり、期待した結果が出なかったから、またはコミュニケーションが誠実でなかったから、ホームページ制作会社を乗り換えるのです。
専門サービスが生み出す価値は、結果とプロセスの両方の品質から生み出されます。結果品質にせよプロセス品質にせよ、これらを高い水準でクリアするには、徹底した顧客志向が必要です。依頼者が望む結果を出すこと、またそのために依頼者に真摯に向き合うという顧客志向は、ホームページ制作会社に必須の精神です。
ものづくり志向で取り組む専門サービス
ものづくりにおいては、きちんと機能しない製品は不良品です。走らない車、冷えない冷蔵庫、映らないテレビなど、期待した効果のない製品は返品交換が当然です。そうした不良品が出ないよう、不具合が出にくい設計をし、素材を吟味し、加工精度を高め、また万が一の故障に備えるサポート体制を敷くのがものづくりです。
こうしたものづくり志向は、ホームページ制作を仕事に選ぶ人々の多くが強く持っています。弊社ドコドアの社員たちも例外ではありません。自分たちが作り出すものによってクライアントやユーザーの問題を解決することはもちろん、より使いやすく、より美しく、より安く、より安定した品質のホームページを提供すべく日々努めています。
ホームページ制作は「クライアントの問題を解決する」という専門サービス業であり、徹底した顧客志向の元に提供するサービスです。しかし一方では「形あるものを作り上げる」という製造業に近い側面もあり、この面では「より美しく、より精度を高く、より不具合を少なく」というものづくり志向が力を発揮します。
ホームページ制作の依頼先を選定するにあたっては、ホームページ制作が持つ「顧客志向」と「ものづくり志向」という2つの側面から、依頼先候補を評価するのがおすすめです。言われたとおりの用役をこなすだけの単純なサービスや、大量生産品のような汎用の成果物では、あなたは満足できないでしょうから。